滋賀医科大学医学部附属病院 病院機能指標 2022年度

病院独自集計のQI(1~6項目)関連指標

関連項目 87、88、89、90、92、94

指標の解説

項目87
急性心筋梗塞の患者で病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合
急性心筋梗塞では予後を規定する因子のひとつとして早期再灌流が重要である。急性心筋梗塞発症から再灌流までの時間のうち医療者側で介入できる因子は、来院から再灌流までの時間、すなわちDoor to balloon time (D2B) であり、急性心筋梗塞に関するガイドライン(日本循環器学会)では、このD2B time を90分以内とすることが望ましいとしています。 
項目88
糖尿病外来で薬物療法中の糖尿病患者の平均HbA1c値
糖尿病合併症の予防のためには、良好な血糖コントロールを維持することが重要です。HbA1cは過去1~2か月間の血糖コントロール状態を知る指標であり、合併症予防のための目標は7.0%未満とされています。なお、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性など(治療強化が困難な場合)は、個別の目標値(8.0%未満)が推奨されています。
項目89
CKD(慢性腎臓病)患者の血圧コントロール達成率
2012年度からCKD教育入院を行っており、日常生活を見直すことができるよう、チームで指導・支援しています。 CKDの進行には血圧が大きく関わっており、血圧をコントロールする事はCKDの進行を抑制する重要な因子です。 但し、過剰な降圧は生命予後を悪化させるため、ガイドラインに基づき定義の目標とします。
項目90
t-PA治療または血管内治療の実施率
脳血管が閉塞して生じる脳梗塞では、発症からの時間が浅く、救済可能な脳還流が低下した組織であるペナンブラが残される“超急性期”に対しては、血栓溶解療法(t-PA静注療法)やカテーテルを用いる血管内治療(EVT)による急性期再開通療法が患者の予後を改善することが証明されています。しかし、急性期再開通療法の実施率は2021年の調査で全国的にも2割に届きません。これらの急性期再開通治療を適応を十分に検討し、実施できれば、患者さんの予後やQOLの改善に寄与し、医療の質の向上に繋がります。
項目92
口腔ケア依頼患者数
2005年6月にデンタルサポートシステムを発足し、院内での病棟患者さんの口腔ケア活動を行っています。また、2012年よりオーラルマネジメントシステムという手術前後や化学療法・放射線療法などの前後における口腔内診査や、口腔内の清掃状態が悪い患者さんなどに対する口腔ケア活動を行っています。
周術期口腔機能管理は、特に全身麻酔での手術、化学療法、放射線療法を受ける患者さんに対し、術前・術後に口腔清掃や咀嚼や嚥下などの口腔機能の向上を図り、誤嚥性肺炎等の術後の合併症を予防するものです。
経口摂取・栄養の改善につなげ、在院日数の短縮やQOL(生活の質)の向上が期待できます。このシステムを効率的に運用し、より多くの口腔ケアが必要な患者さんに対応することを表した指標です。
項目94
がん患者リハビリテーションの推進
2010年度の診療報酬改定で、がん患者リハビリテーション料が新設されました。この特徴は、がん患者さんの手術・放射線治療・化学療法等の治療による機能低下を予防する目的で、治療前からリハビリ的な介入が可能である点にあります。
滋賀県のがん診療連携拠点病院として、がん患者さんのリハビリテーションをよりシステマティックに推進することにより、医療の質ならびに患者満足度の向上を図ります。

当院の実績

指標 項目 掲載値 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
急性心筋梗塞の患者で病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合 87 当院 90 83 70 58 75
糖尿病外来で薬物療法中の糖尿病患者の平均HbA1c値 88 当院 7.26 7.36 7.2 7.1 7.2
CKD(慢性腎臓病)患者の血圧コントロール達成率 89 当院 88.2 92.5 100 76.9 62.5
t-PA治療または血管内治療の実施率 90 当院 14.9 17.3 29.92 35.3 33.3
口腔ケア依頼患者数 92 当院 1,425 1,503 1,616 1,931 2,020
がん患者リハビリテーションの推進 94 当院 6,864 7,121 7,850 6,577 6,166

当院の自己評価

項目87
急性心筋梗塞の患者で病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合
急性心筋梗塞では予後を規定する因子のひとつとして早期再灌流が重要である。急性心筋梗塞発症から再灌流までの時間のうち医療者側で介入できる因子は、来院から再灌流までの時間、すなわちDoor to balloon time (D2B) であり、急性心筋梗塞に関するガイドライン(日本循環器学会)では、このD2B time を90分以内とすることが望ましいとしています。 
急性心筋梗塞の患者で病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合
↑ 高いほど良い

急性心筋梗塞の患者で病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

2022年度も引き続きコロナ禍が続いておりますが、救急外来受診からカテーテル検査までの流れは前年よりは簡略化することができD2B timeは改善傾向にあります。一方で大学病院という特性上、重症症例が多いことなど目標達成率の改善は比較的困難と考えられる背景があります。また症例数が少ないため、1症例の時間の達成率への影響が大きくなります。急性心筋梗塞の救急治療には、救急到着前の受け入れ準備に始まり、カテーテル検査治療の手技に至るまで、ありとあらゆる部署やシステムとそこに携わる職員の連携が不可欠となります。従って、 D2B time の短縮には業務の単純化が求められています。救急外来受診から循環器内科相談までの時間短縮も課題であります。また、急性心筋梗塞に対しては、24時間365日の対応であることから、夜間休日の体制に対する改善点はないかを検討しています。このように、この指標は、病院の救急医療への取り組みの評価そのものであり、病院全体の課題として取り組んで行きます。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>
急性心筋梗塞を発症した患者が病院到着から再還流までの所要時間が90分以内の割合(目標値:80%以上)

<算出方法>
分子:患者の病院到着時刻から再灌流までの所要時間が90分以内の患者数
分母:急性心筋梗塞で緊急カテーテル治療を行った患者数

<参照文献・学会ガイドライン等>
ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
単位
項目88
糖尿病外来で薬物療法中の糖尿病患者の平均HbA1c値
糖尿病合併症の予防のためには、良好な血糖コントロールを維持することが重要です。HbA1cは過去1~2か月間の血糖コントロール状態を知る指標であり、合併症予防のための目標は7.0%未満とされています。なお、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性など(治療強化が困難な場合)は、個別の目標値(8.0%未満)が推奨されています。
糖尿病外来で薬物療法中の糖尿病患者の平均HbA1c値
↓ 低いほど良い

糖尿病外来で薬物療法中の糖尿病患者の平均HbA1c値グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

今年度は、ほぼ例年どおりの値でした。当院では、 インスリン使用患者さんが多く、合併症が進行したり併発症があることから治療強化が困難な重症患者さんも多くおられることを考慮すると、良好な結果だと思われます。(なお、糖尿病を専門とする全国51施設の調査では平均HbA1cは7.14%でした。)今後も、患者さんの良好な血糖コントロールを通して、より良い診療を目指します。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>
糖尿病外来で薬物治療を受けている患者の平均HbA1c値(%)
分子: 調査対象月に糖尿病外来で薬物治療を受けた患者のHbA1c値

<算出方法>
分子: 調査対象月に糖尿病外来で薬物治療を受けた患者のHbA1c値
分母: 調査対象月に糖尿病外来で薬物治療を受けた患者総数

<参照文献・学会ガイドライン等>
糖尿病治療ガイド 2022-2023(日本糖尿病学会)
JDDM 研究 ホームページより
単位
項目89
CKD(慢性腎臓病)患者の血圧コントロール達成率
2012年度からCKD教育入院を行っており、日常生活を見直すことができるよう、チームで指導・支援しています。 CKDの進行には血圧が大きく関わっており、血圧をコントロールする事はCKDの進行を抑制する重要な因子です。 但し、過剰な降圧は生命予後を悪化させるため、ガイドラインに基づき定義の目標とします。
CKD(慢性腎臓病)患者の血圧コントロール達成率
↑ 高いほど良い

CKD(慢性腎臓病)患者の血圧コントロール達成率グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

2018年度から達成率の目標を80%に設定しています。2020年からエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018による降圧目標に変更し、患者さんごとの病態に配慮した、より安全で効果な目標値となりました。2022年は、目標に達することはできませんでしたが、コロナ禍で、入院対象が重症CKD患者さんに偏り、入院期間が短くなったことが影響しました。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>
退院時までに、24時間血圧の平均値で下記の基準を達成する
1) 血圧130/80mmHg未満:75歳未満で糖尿病、蛋白尿がある患者
2) 血圧140/90mmHg未満: 75歳以上で1日の最低収縮期血圧が110mmHg未満にならず、起立性低血圧や急性腎障害などの有害事象がない患者、75歳未満で糖尿病や蛋白尿がない患者、75歳未満で糖尿病、蛋白尿があるが1日の最低収縮期血圧が110mmHg未満である患者
3) 血圧150/90mmHg未満: 75歳以上である患者

<算出方法>
分子:上記の目標を達成できた患者数  
分母:CKD教育入院の患者数

<参照文献・学会ガイドライン等>
*エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)
単位
項目90
t-PA治療または血管内治療の実施率
脳血管が閉塞して生じる脳梗塞では、発症からの時間が浅く、救済可能な脳還流が低下した組織であるペナンブラが残される“超急性期”に対しては、血栓溶解療法(t-PA静注療法)やカテーテルを用いる血管内治療(EVT)による急性期再開通療法が患者の予後を改善することが証明されています。しかし、急性期再開通療法の実施率は2021年の調査で全国的にも2割に届きません。これらの急性期再開通治療を適応を十分に検討し、実施できれば、患者さんの予後やQOLの改善に寄与し、医療の質の向上に繋がります。
t-PA治療または血管内治療の実施率
↑ 高いほど良い

t-PA治療または血管内治療の実施率グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

脳梗塞の対象例は2016年度から100例を超え、2019年以降は年間130例前後の脳梗塞症例を担当しています。2022年度は脳梗塞入院患者総数は128例に対してtPA施行23例(17.9%)、EVT施行32例(25.0%)であり急性期再開通療法の実施は45例(33.3%)で、全国平均よりも高い実施率でした。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>
新規の全脳卒中患者におけるt-PAまたは血管内治療施行の割合

<算出方法>
分子: t-PAまたは血管内治療施行患者数
分母:当科における全脳梗塞(TIAを含む)患者数

<参照文献・学会ガイドライン等>
脳卒中治療ガイドライン2021(日本脳卒中学会:脳卒中ガイドライン委員会)
単位
項目92
口腔ケア依頼患者数
2005年6月にデンタルサポートシステムを発足し、院内での病棟患者さんの口腔ケア活動を行っています。また、2012年よりオーラルマネジメントシステムという手術前後や化学療法・放射線療法などの前後における口腔内診査や、口腔内の清掃状態が悪い患者さんなどに対する口腔ケア活動を行っています。
周術期口腔機能管理は、特に全身麻酔での手術、化学療法、放射線療法を受ける患者さんに対し、術前・術後に口腔清掃や咀嚼や嚥下などの口腔機能の向上を図り、誤嚥性肺炎等の術後の合併症を予防するものです。
経口摂取・栄養の改善につなげ、在院日数の短縮やQOL(生活の質)の向上が期待できます。このシステムを効率的に運用し、より多くの口腔ケアが必要な患者さんに対応することを表した指標です。
口腔ケア依頼患者数
↑ 高いほど良い

口腔ケア依頼患者数グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

デンタルサポートシステムを発足して以降、病棟看護師への勉強会など様々な啓発活動を行い、その効果から口腔ケア患者数は年々増加しています。2012年4月より、手術前後、化学療法、放射線療法前後に患者さんの口腔ケアを専門的に行う「周術期口腔機能管理」が保険適用になりました。それに伴い、2014年11月より「周術期オーラルマネージメントシステム」を設立しました。手術療法・化学療法・放射線療法の患者すべてを対象にシステム運用できるよう努めています。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>(周術期口腔機能管理)
全身麻酔下の手術を受ける患者さんや化学療法、放射線療法を受ける患者さんの口腔内診査や口腔内清掃、口腔機能管理を行い、口腔内環境の管理を行うことによって治療前後の合併症を防ぐ目的で行われる口腔の機能管理です。主科より口腔ケアの依頼を受けて実施しています。
<算出方法>
周術期口腔機能管理依頼を受け、実施した数 
単位
項目94
がん患者リハビリテーションの推進
2010年度の診療報酬改定で、がん患者リハビリテーション料が新設されました。この特徴は、がん患者さんの手術・放射線治療・化学療法等の治療による機能低下を予防する目的で、治療前からリハビリ的な介入が可能である点にあります。
滋賀県のがん診療連携拠点病院として、がん患者さんのリハビリテーションをよりシステマティックに推進することにより、医療の質ならびに患者満足度の向上を図ります。
がん患者リハビリテーションの推進
↑ 高いほど良い

がん患者リハビリテーションの推進グラフの値は当院の実績の表内にも記載しています。

当院では2011年11月よりがんリハビリテーション料を算定しています。対象者も多様で、積極的な治療を行う周術期の患者さんから、末期がんの患者さんに対しても 症状やニーズに応じたリハビリテーションサービスを提供しています。また小児がんの子供さんにも積極的に介入を進めており、家庭復帰や復学に向けた最適な対応が行えるようチームとしてアプローチしています。2021、4年度はコロナ禍の影響に加え、がん患者リハビリテーション料が入院のみの算定対象になることから、在院日数の短縮、外来化学療法への移行などの因子も関連して、件数が減ったものと考えます。また、算定開始から数年間は右肩上がりで件数が増えましたが、現在ではがんのリハビリテーションがおおよそ定着したとも考えられ、今後6,000前後の件数で推移すると予想しています。
項目の定義・算出方法
<項目の定義>
入院中の対象患者でがん患者リハビリテーション料を算定できた件数

<算出方法>
がん患者リハビリテーション料を算定できた延べ件数
単位
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